-
記事カテゴリーから選択
【燃料タンクコーティング】「タンクライナー」解説 その1
■燃料タンクコーティング施工に使うケミカル類
弊社で燃料タンクコーティングを施工する際に使うケミカル類ですが
ほぼ全て(株)和光ケミカルの製品を使っています。
主な軸となっている製品は以下の3点となります。
①タンクライナー(燃料タンク内面塗料)
➁ピカタンZ(燃料タンク内のサビ除去剤)
③アクアクリーンハード(水溶性脱脂洗浄剤)
燃料タンクコーティング施工に特化した商品ラインナップとしては
現在まで10年以上に渡り弊社ではケミカル側が原因となる致命的なトラブルも一切無く
急に中身の成分を総入れ替えとか製品回収などの劇的な変更も記憶にありません。
(※注:容器やセット内容品・洗浄成分の配合などマイナーチェンジは幾度かありました)
どの製品も供給が常に安定しており「最強の布陣」だと思います。
一社でズラッと揃えることでケミカル同士の相性も問題なく安心して使う事ができるのも強みですね。
日頃から大変お世話になっておりますので製品の特長や注意点などを解説していこうかと思いますが
説明書を見たり他のネット上で得られるような通り一遍の情報ではなく
「実際にしかも長年に渡り大量に使い倒してきた」からこそ知っている情報も含めて
実際に使用する上での必要な準備や心構えですとか注意点すべき事柄など
普通に使っているだけではなかなか見えない部分のお話もしていきましょう。
■「タンクライナー」燃料タンク内面塗料の解説

▼「タンクライナー」のセット内容について
色々とアレやコレの説明を解説を始める前にまずは重要の大前提のお話から…
基本的に「タンクライナー」という商品は
「モーターサイクル用の鉄製燃料タンクのコーティング」を目的として作られています。
まずはココを正しく解釈しなければ何もはじまらないのです。
「タンクライナー」標準1セットの内容は以下となっています。
(注:2025年2月執筆時の情報です)
①主剤(大きい缶・240cc)
➁硬化剤(小さい缶・60cc)
③シリンジ(注射器:ゴム製ピストンシールの耐薬品性能はそれほど高くない)
④シリンジ用チューブ(注射器先端に取付けるPP製のチューブ・長さ約40cm)
⑤計量カップ(200ccまで目盛付き・PP製のため耐薬品性良好)
⑥取扱説明書(初心者の方は端の端までしっかりと読んで欲しいです!)
※上記6点・各1個がプラケースに収納された形でセットとして販売されています。
シリンジ・チューブ・カップといった消耗品については
和光ケミカルでは基本的にバラ売りはしていないみたいです。
追加で必要な際にはご自身で別途入手する必要があります。

「タンクライナー」1セットで施工可能な燃料タンク容量と回数につきましては
「最大で20リットルの鉄製燃料タンクが2回コーティング出来る分量」
となっています。
言い換えますと
①「10リットル燃料タンクであれば4回施工が可能」
➁「20リットル燃料タンクであれば2回施工が可能」
③「40リットル燃料タンクであれば1回施工が可能」
といった分量で使用できる、ということになります。
1セットで施工できる容量として考えますと
取扱説明書にも記載ありますが推奨されるコーティングは「2回施工」ですから
上記のうち標準的に想定されている使用容量は①と➁になるでしょう。
↑後述しますがココの数値が非常に重要なのでよく覚えておいてください!
私見でも一般的なモーターサイクル用の燃料タンクは20リットル以下の車両が多いですから
1セットの内容としては充分に納得できるサイズ感ではないでしょうか。
燃料タンクが小さければ1回に使用するケミカルの量も相応に少ないですから
付属の200cc計量カップとシリンジだけでも問題なく作業を進められるでしょう。
※※注意※※
付属のシリンジは1回の使用でゴム製のピストンシールがダメになってしまう場合が結構あります。
余剰塗料の抜き取り作業中にピストンとシールが簡単に分解してしまうケースもあります。
シリンジ用チューブも内径が細いので残ったコーティング剤が硬化して詰まってしまうことも。
どちらも2回目のコーティングには安心して使うことが出来なくなる可能性があるので
念のためもう1セット以上の予備を用意しておくことをお勧めしておきます。
※ちなみに弊社ではシリンジとチューブの再使用は絶対にしません。1回使用したら廃棄します。
ただでさえ時間に追われる作業になりますし無駄なトラブルを防ぐためにそうしています。
コーティングを施工すべき「回数」についてですが
「1回の塗布だけでは塗膜の厚さが不足する」という理由のために
説明書に記載されています通り『コーティングは2回施工』が推奨となっています。
過去に和光ケミカル開発部の方に直接話を聞いたところ
コーティングは流し込みで塗っていくという都合もあり
1回の塗布だけでは塗膜が部分的に薄くなってしまうのだそうです。
そのまま使用すると薄い塗膜部分から燃料が浸み込んでいずれ塗膜が剥離する可能性が高いです。
※弊社でも過去にコーティング1回施工の燃料タンクにおいて経年で剥離等のトラブルに見舞われるケースが発生しました。
2回塗布することで塗膜が全体的に厚くなりムラが無くなることでより強固な皮膜となります。
『コーティングは2回施工!』を厳守するようにしてください。
ココを確実に施工することで本来の性能を発揮する商品である、と弊社では考えています。
取扱説明書についてですが
表裏、端から端までびっしりとイラストやら文字やらの情報が記載されているので
「なんだか読むのが億劫ですぅ」っていう感想もまあわかるのですが
すっごく重要な情報がおてんこ盛りなのでサラッと目を通すだけ、で終わらせないように!
作業を失敗したくなければ、作業内容を理解できるまでしっかりと読み込んでおいてください。
(特に温度等の数値関係)
A4ペライチ両面印刷の中に重要な情報をギュギュっ!と詰め込みすぎて
ちよ~~っと見づらい部分もあったり少々説明不足な点などあったりしますが
総じて良くまとめた優秀な解説書になっているとは思います。
和光ケミカルさん側のホームページで誰でも自由にコレを読めるようにしておいてくれると良いと思うのですよ…
例えば初心者の方でも購入前に色々と施工に向けての道具類の準備や心構えとか事前にできますからねぇ。

▼「タンクライナー」を自動車用として転用する際の使用数量について
繰り返しになりますが
「タンクライナー」は基本的に「モーターサイクル向けにパッケージされた商品」です。
つまり
そもそもの話「自動車用燃料タンク専用の商品ではない」ということですね。
もちろんケミカルの成分的には鉄製の自動車用燃料タンクであれば転用は可能ですが
和光ケミカルさんからキチンと推奨されている施工方法ではなく
キッチリと細かく解説やフォローをしてもらえるような話でもない
ということになるでしょう。
では一体どの点が「自動車向けではない」のでしょうか?
「自動車用」と「モーターサイクル用」の「燃料タンク」…
一言で「燃料タンク」と呼ばれる全く同じ名称の部品なのですが
モーターサイクルと自動車では
単純に「燃料タンクの容量(大きさ)が違うだけ!」といった話だけではなく
実際には外板形状から内部構造まで大きく違っています。
自動車の燃料タンクコーティング作業への転用を考えた場合には
標準のセット内容だけで施工を完結させようとしても絶対的に足りないのです。
そのあたりの違いをしっかりと考慮した上で
「使用数量を増加させる」「準備する道具類を変えたり増やしたりする」といった形で
事前に考慮・検討をする必要があります。
ちなみに弊社で自動車用燃料タンクにコーティングをする場合には
メーカー指定の2倍(1セット=20リットル分を1回分)を基本使用量としています。
★自動車用燃料タンクへ使用する場合の数量目安
>容量60リットルの燃料タンク →3セットx2回コーティング=合計6セット使用する
>容量80リットルの燃料タンク →4セットx2回コーティング=合計8セット使用する
※※注意※※
内部に構造物が全く存在しない極めてシンプルな形状の燃料タンク(例:ガソリン携行缶のような形状)であれば
製造メーカー指定の「基準量」で施工する場合も勿論あります。
そう「倍量」です。
当然ですがコストの面でも「倍量」となります。
弊社でのコーティング施工のお見積りが他社様より高額になってしまいがちになる
大きな要因の一つ、なのですがこればかりは仕方がありません。
「メーカー指定の倍量使うなんて。いくらなんでも多すぎじゃないの?」
当然ながらそう思われる方も沢山いらっしゃるでしょう。
最大の理由としては
燃料タンク内部に「バッフルプレート」等の仕掛けが多く付いている場合には
タンク内部の表面積が倍増どころではない程に大きくなるからです。
ここで言う「バッフルプレート」とは下画像に見られる「隔壁」や「仕切り板」の事です。
少ない車両では1~2枚程度ですが多い場合には5枚以上入っている車種もあります。
また1枚が大型かつ複雑な形状で燃料タンク内部に所狭しと張り巡らされているケースもありますから
一概に「枚数」だけでは語りつくせない話ではあるのですが…

「でも内部に板が何枚か付いただけで表面積が倍増する?そんな訳ないでしょ?」
と少しでも疑問に思われるようでしたら
まずは是非ともご自身で表面積の違いだけでも算出してみてください。
ちなみに
「燃料タンク内部に1枚のバッフルプレートが付いている」場合には
「そのバッフルプレートの表裏両面に塗料を付着させる」必要がありますので
その点を留意のうえで計算をしてみましょう。
内面だけでなく外側から見た形状(外板側)についても
モーターサイクルと自動車用のタンクは大きく違っています。
外板の形状そのものが非常に凹凸が多く複雑な面構成になっています。
製造メーカー・車種・グレード・年式・お国柄…などなど
様々な要因により形が異なっていますが
高年式の車両になるにつれてよりデザインに複雑さが増していく傾向があります。
燃料タンク内部構造についてもそれは同様の傾向で
バッフルプレートの壁面には大小の穴が沢山開いていたり…
はたまた全く穴どころか隙間さえほとんど開いていない壁のような形状であったり…
燃料の流れに負けないように強度を上げる目的で折り目を複雑に付けていたり…
時代の流れと共により複雑な機構が器用に組み込まれている、といったところでしょうか。
複雑な形状の外板に覆われて内部に多くの配管や機構が組み込まれている燃料タンクですが
コーティング剤を「内面すべてに」「満遍なく」「確実に行き渡らせる」には
どうしても多くのコーティング剤が必要となります。
複雑で立体的な構造の燃料タンクでは「流し込み塗布」程度の話では済まないのです。
そのためには取扱説明書に記載があるような
「タンクを回しながら本液(コーティング剤)が全体に行き渡るようにゆっくりと3~4回程回す」
などといったおとなしい動きをさせているだけでは
「内面すべてに」「満遍なく」「確実に行き渡らせる」ことは絶対にできません。
コーティング剤を燃料タンク内部で構造物へ向けて
「バシャッと派手にぶっかける!」ほどの派手な動きをさせなきゃならないケースもあります。
時には燃料タンクを叩きつけるような荒々しいアクションが必要です。
部分的にコーティング剤が回りずらい構造であればそこに当たるように狙いを定め
溜め込んだコーティング剤を投げつけるような方向へ急激にひっくり返すように叩きつける!
…といった方法で施工を進める場合も多々あります。
この方法を使う場合には
燃料タンクを振った際にコーティング剤が「ジャバジャバ~」と音が聞こえるほどの分量が必要です。
コーティング剤がメーカー指定の基準量ですと内面に張り付く分量が大半となってしまい
余剰塗料が少なくなりますので燃料タンクを振っても音が出るほどではありません。
コーティング剤が「倍量」であればこういった変則的な施工も可能になりますから
短時間で「流し込み塗布」の工程を確実に終わらせることができる訳なのです。
詳しくは後述(「その2」「その3」参照)しますが
コーティング剤を流し込み内部に行き渡らせる作業は
硬化剤を入れた瞬間から攪拌・流し込み塗布・抜き取りなどを含めた
すべての作業時間が限られていることもあり
短時間で確実かつスムーズに作業を進めるためにあらゆる手段を用いて進めなければなりません。
では、内部構造や表面積の事を全く考えずコーティング剤の使用量を見誤り
「メーカーが指示したモーターサイクル向けのギリギリピッタリの容量しか使わなかった」
場合にはどのようなリスクがあるのでしょうか?
燃料タンク内部の複雑な構造物がコーティング剤のスムーズな流れを邪魔する、などの要因で
塗料が完璧に隅々まで行き届かず塗装ムラ(=塗れなかった部分)ができてしまったりします。
かといっていつまでも流し込み塗布作業を延々と長時間続けていると
コーティング剤の抜き取り作業が完了する前に塗料の硬化が始まってしまう…
といった失敗を招きやすいのです。
コーティング剤が塗れていない部分が出てしまった(=流し込み塗布を失敗した)場合であれば
ココは一旦きっぱりと諦めて
余剰塗料を手早く抜き取り→完全硬化をさせた後に
再度コーティング施工をすることでフォローできる可能性が高いので
まだリトライのチャンスが残されています。
ただし追加で無駄な時間と労力、そして余分なケミカルのコストがのしかかって来る形になる訳です。
確かにコーティング剤の使用量が「倍量」となることで
「余剰塗料の抜き取り作業の手間」が多くなってしまいますが…
例え「標準量のコーティング剤」を使っていたとしても
余剰塗料の抜き取り作業は必ずしなければならない作業な訳ですから
実際には「抜き取り量が増えるだけ」なんです。
コレに対してキチンとした準備と対策さえしていれば追加で必要となる時間はごく短時間で済みます。
※対策例:作業前に抜き取り用シリンジを複数用意して抜き取り速度を大幅に上げる
経験上の話で恐縮ですが
抜き取り量が増えることで作業時間が長くなってしまうデメリットよりも
倍量を使うことで得られるメリット(=コーティング失敗の確率が大幅に減る)の方が
完全に上回っている、と弊社では考えています。
弊社が推奨しております「倍量のケミカルを使う」事は
一見すると「クレイジー」で「明らかに無駄」な行為に見えるかもしれませんが
こういったトラブルを未然にそして確実に避けることが出来る方法として辿り着いた結論です。
大袈裟な言い方になりますが「経験上ではいまのところ最適解」と言っても良いかと思います。
ケミカルの使用量が増えることで作業コストが高くなってしまいますが
「失敗のリスクが低く」「塗布の効率が良い」といった方向性になりますので
無暗に「モーターサイクル向けの標準量」で進めた場合と比較して
結果としてコーティング施工全体が「短時間」で「コスト安」となります。
200例以上の燃料タンクのコーティングをお受けしてきた弊社では
この使用量を守ることで上記のようなトラブルは当然ですが一切皆無です。
コーティング施工に不慣れな方ほどココの部分は無視しないように心掛けてほしいですね。
「その2」に続きます。
