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【燃料タンクコーティング】「タンクライナー」解説 その2

 

■「タンクライナー」燃料タンク内面塗料について その2

   

 

今回は「タンクライナー」の硬化特性と粘度特性についての話です。
コーティング作業の具体的なヒントについても触れていきます。
車屋さんやバイク屋さんでは一般的に使われない性質を持った塗料だと思いますので
普段接しているモノと同じような性質だろう…と思い込んで安易に考えていると大失敗を招きます。
あらかじめ塗料の性質を知っておけば準備もラクになりますし
失敗の可能性も大幅に低くすることができるはずです。

 

 

 

 

▼タンクライナーの硬化特性について

 

 

燃料タンクコーティングケミカルは数多く存在しているのですが
この「タンクライナー」が大きく他の製品と違っている点は
主剤と硬化剤の2種類の薬剤を混ぜて化学反応させる「2液性塗料」であることです。

 

 

「2液性塗料」の特徴は塗料の厚さや量に関わらず
ある一定の時間を経過すると確実に(=強制的に)塗料全体を硬化させることができます。
で、これの何が凄いのか?といいますと
過去に販売された「1液タイプのコーティング剤」ですと
ケミカルの抜き取り作業が不十分だった場合
局部的に塗料が溜まってしまい平坦な部分と比べて塗膜が極端に厚くなります。
その厚くなった塗装の内部が完全に固まらず液体もしくはゲル状のまま燃料タンク内部に残り
後日流れ出してしまったり、密着不良となって剥離の原因になったり
といったトラブルになりやすい、といった事例が見られました。
「タンクライナー」は抜き取り作業が不十分で
コーティング剤が燃料タンク内に多く残ってしまう(塗膜がブ厚い)ような場合でも
塗料全体が強制的に完全硬化しますのでそういったトラブルとは完全に無縁です。

 

完全硬化させた「タンクライナー」のサンプルを切断してみましょう。
サンプルのサイズはおよそ直径100mm高さ80mmといったところです。
燃料タンクから抜き出してペイントポットで硬化させたモノになります。
パッと見だとかなり大きい樹脂のカタマリ、といった感じの大きさです。
切断には木工用のノコギリを使用、そこそこ固いので切断には10分程度かかりました。

内部が完全乾燥して固くなっているので切断面に鋸刃の跡がビッシりと残っていますね。
どの場所にも生乾きでブヨブヨと柔らかい部分はありません。
デカいハンマーでぶっ叩いても簡単には割れたり大きく凹んだりはしません。
強固なだけでなく耐薬品性が強くガソリン・軽油程度では溶けません。

 

ただし!
強制的に硬化してしまう時間が決まっているので
全ての作業を的確に素早く確実にこなしていかないと…
中途半端な状態で固まってしまい取り返しのつかない状態になってしまう、という欠点があります。
作業中または作業完了後に「しまった!」と思い直して作業をやり直そうとしてもすでに手遅れです。
後戻りはできませんので失敗は絶対に許されません。
硬化剤を混ぜてしまう前にしっかりと作業の準備を済ませておくことが重要になります。

 

硬化までの時間ついては温度の影響を大きく受けます。
 ★硬化時間の変化
 >夏季(気温が高い・ケミカルの温度が高い・作業環境が高温)
  →硬化時間が短い(=早く硬化し始める)

 >冬季(気温が低い・ケミカルの温度が低い・作業環境が低温)
  →硬化時間が長い(=遅く硬化し始める)

 

 

基本的には主剤への硬化剤混入から少しずつ粘度が増していき
約30分程度でケミカルが熱を持ちはじめて本格的に硬化が始まります。
時間の経過と共に粘度が増すので余剰塗料の抜き取りは出来る限り早く行います。
そういった理由からも塗布を手早く終わらせるようにしましょう。
全体で20分ほどで作業を全て完了させるような段取りが必要となります。
 >10分間→塗布作業
 >10分間→抜き取り作業
…ぐらいのスケジュール感になりますが作業に慣れていない方には非常に短く感じるはずです。

 

気温の高い夏季にはさらに素早く確実な施工を心掛けて準備をしなければ
完全に抜き取りができないまま硬化が始まってしまった!…などというトラブルになってしまいます。
逆に気温の低い冬季には硬化時間が少し長くなる傾向なので
若干ではありますが余裕を持った作業が可能といえます。

 

気温が低い環境での作業は以下の点に注意して作業を行ってください。
5℃を下回る環境では塗料の化学反応が遅くなりすぎるため上手く硬化しません。
「硬化時間が長い」程度の話ではなく、塗膜が正しい性能を発揮してくれない可能性もあります。

硬化不良だけでなく予期しないトラブルを招く可能性がありますので作業環境には注意が必要です。

 

タンクライナーはある程度「高温の環境」を作ることで強制的に乾燥を促進させることができます。
取扱説明書に詳しく記載がありますが
密閉空間の庫内温度をドライヤーなどで加熱する形で
80℃を上限にして乾燥させることでおよそ20~30分程度で完全乾燥となります。
モーターサイクル用燃料タンクであればサイズが小さいですから
大きめのダンボールを加工して乾燥室のような形状に工作すれば対応もできるかと思いますが
自動車用の燃料タンクですと容量によってはかなりの大型になるので
塗装乾燥室などを転用する、もしくはいっそ自作してしまう方が現実的かもしれません。
ちなみに弊社では専用の乾燥室を製作して対応しております。
乾燥室については過去記事にほんの少しですが記載ありますのでそちらもご参照ください。

 

 

 

 

▼タンクライナーの粘度特性について

 

 

主剤の粘度についても気温の影響を大きく受けます。
 ★タンクライナーの粘度変化
 >夏季(気温が高い・ケミカルの温度が高い)→粘度が低くなる(柔らかくなる傾向)
 >冬季(気温が低い・ケミカルの温度が低い)→粘度が高くなる(固くなる傾向)

 

気温が25℃を超える夏季には
主剤の粘度が柔らかくなりますので
攪拌や燃料タンクへの流し込みなどの作業については楽にこなせるのですが
硬化が始まるが時間が極端に短くなるため
より手早く作業を進める必要に迫られます。

 

気温が15℃以下となる冬季には
主剤の粘度が高くなるために攪拌・流し込み作業が極端にしづらくなります。
ただし硬化が始まるまでの時間は長くなりますので
追われるように慌てて作業を進める必要はないでしょう。

 

大事な事なのでもう1度言っておきます。
5℃を下回る低温環境での作業は化学反応が遅くなり塗料が硬化しません。
「完全硬化までの時間が異常に長い」程度の話ではなく

硬化不良などの予期しないトラブルを引き起こす可能性が高いので注意が必要です。

 

では気温が低すぎる場合にはどうしたらよいのでしょうか?
そういった時には「ケミカル自体を加温して対策する」といった方法もあります。
加温の方法ですが「主剤を容器ごと」「ゆっくりと安全な方法で」温めていきます。

 

人体に有害な有機溶剤を温めることになりますので
「ヤカンでお湯を沸かす」程度のつもりでいると非常に危険です。
加温する際には「危険な作業を行っている!」という意識を持ってください。

事故防止のため以下を厳守して安全に作業を行いましょう。
 >「鉄製キャップは外しましょう」→容器の破裂防止のため密閉したまま加温しないように!
 >「温度・時間を計測しながら」→急激な加温は危険です。常に状態を管理しましょう!
 >「換気に注意!」→状況によっては有機溶剤の蒸気が発生します。取扱には充分ご注意を!

 

弊社では加温の際には以下のような条件で実施しています。
①温度は30℃程度の温度を上限とする(高温厳禁!)
➁加温時間は最長でも1時間以内を目安に(長時間厳禁!)

③急激に温度を上げず安全な方法で温める
 推奨例:暖房の効いた室内に置く・ぬるま湯で湯煎をする
④加温中は目を離さないように(放置厳禁!)

主剤を温めることで粘度が下がるので攪拌の作業をスムーズに進めることが可能です。
ただし、加温した場合は相応に硬化時間が早くなります。
作業前の準備は怠らないようご注意願います!

実はこの「攪拌」が事前作業の中では大変に重要な部分になっています。
ここを怠ると確実に施工失敗に直結する流れとなるほどに大切なので次項で詳しく解説します。

 

 

 

 

▼【重要】主剤の「攪拌」作業は念入りに時間をかけて!

 

 

「主剤」側、容器の鉄蓋を外して樹脂キャップを外すと中身が見えます。
天井側には少し黄ばんだ透明な柔らかい液体が入っていて
底側には銀色の固い粘土のような物体が沈んでいます。
つまり「主剤」の容器には「2種類の物質が分離して入っている」ということになります。
攪拌の作業はこの「透明な液体」と「銀色の固い粘土」を地道に混ぜていく作業になります。

 

この「攪拌」ですが…実に面倒くさいのです。
底に溜まっている「銀色の固い粘土」がそこそこ固くて「透明な液体」と混ざりずらいんです。
「タンクライナー」のセット内容には入っていないのですが
弊社では塗装用の樹脂棒を使って少しずつコネコネして地道にゆっくりと攪拌していきます。
この「銀色粘土」の固体の成分が「透明な液体」と完全に混ざりきって
全体が「粘度の高い銀色の液体」になった時点で完成となります。
固体成分がほんの少しでも残っているならば繰り返ししつこく攪拌をやり直してください。
「絶対に固体成分を全て液化させるまで完全に攪拌する!」ことが重要です。
そして
「主剤の攪拌が完了するまでは絶対に硬化剤を混ぜない!」ことを忘れないでください。

 

 

様々な種類の塗料攪拌に使用できる専用の棒が販売されています。
樹脂製の作業しやすそうなサイズですと1本およそ¥100~200程度で入手できます。
金属製もありますがタンクライナーの攪拌には樹脂製で充分対応可。
専用品だけあって適度な強度があり攪拌作業がとってもスムーズにできます。
比較的安価ですしキレイに使えば何度も再使用できますので用意しておいても損はしません。
大手通販サイトで入手可能なので「塗料 攪拌棒」「ミキシングバー」で調べてみてください。

 

参考までに弊社で使っているのは下画像にある全長230mm程度の大きさで樹脂製の商品になります。
確かモノタロウ製ペイントポットセット(右画像)に付属していたモノ…だったと思います。
「タンクライナー」の主剤を攪拌するには長さ・幅・固さにおいてジャストサイズです。
他社製品でも同じようなサイズ感で販売されていますので探してみてください。

余談ですが、大きい燃料タンクに多くのタンクライナーを流しこむ際には
上記画像のような1リットルサイズの「ペイントポット」を使うと作業全体が時短になりとても便利です。
一度に複数セットの主剤と硬化剤の攪拌作業が出来ますし、抜き取り作業時にも容器自体が大きいので楽に作業が進めることができます。
その他にタンクライナーに付属しているPPカップと同形状・同性能で1000mlぐらいのサイズも1個当たりおよそ¥100程度の価格で販売されています。

 

ここで2点ほど注意点。
この作業に割り箸などの木材や厚紙などを使わないように!
 →塗料が浸み込んでしまう繊維素材の使用はNGです。
  塗料が吸い込まれると主剤・硬化剤の配分や塗料の配合がが変わってしまい
  結果として硬化不良を起こす可能性があります。
  また繊維素材に付着している異物が入りこむ懸念もあるので絶対に使わないようにしましょう。
  樹脂製や金属製で薬品性能の高いヘラ状の工具や専用の攪拌棒などを使ってください。

 

缶を振って攪拌しようとしてはいけません!
 →缶ごと振ってしまうと泡が大量に発生してしまいます。
  本件塗料の攪拌では泡が出てしまうような方法はNG行為となります。

  この泡が消えないまま硬化剤を混ぜてタンク内に流し込むと
  泡がそのままの形で固まってしまい結果として塗膜の厚みがおかしくなります。
  それ以前にこの「主剤の銀色粘土」は
  缶ごと振った程度では絶対に混ざってくれないほど「固い」です!

 

 

たまにこの銀色粘土が
「えらく固くなっている製品」もありますし「なんだか柔らかい製品」もあります。
個体差があるので少し不安になったりしますが…
どちらも完全硬化時には全く同じ仕上がりなので気にせずゆっくりしっかりと混ぜましょう!
主剤がしっかりと温まっている状態でも1本あたり3~5分ほどはかかります。
固形成分が全て無くなるまでゆっくりとかき混ぜます。
細かいブツが残ってしまったら底面に押し付けて潰すようにすると良いでしょう。
慣れている人(筆者)でもそれぐらいの時間が必要な作業なので
初心者の方はもう少し長~く丁寧に混ぜるつもりでお考えください。
気温が低く主剤自体が冷えていると粘度が高い状態ですと更に混ざりにくい条件となります。
なので冬季には前述したように「適度な加温」をオススメしています。

 

ではこの「攪拌」をいい加減に終わらせてしまったとしたら
結果としてどのような事が起きるのでしょうか?

 

攪拌作業がキチンとできていれば
「銀色粘土」+「透明な液体」が混ざり合って「銀色のドロッ~とした液体」になります。
攪拌作業が不十分のままですと
「銀色粘土」の部分が「粘土状のまま」で残ってしまっている、ということになります。
その状態で硬化剤を混合したとしても
固体の内部にまで硬化剤が到達しない影響で完全硬化するための化学反応がおきません。
どれだけ時間が経過しても高温の環境で乾燥させようとも硬化せず
「柔らかい粘土」のままです。
キチンと攪拌出来ている部分はしっかりと化学反応が起きて固まる一方で
「銀色粘土」が残った部分は永遠に「柔らかい粘土」のままです。

 

つまり
「汚れや異物が入り込んでいる状態でコーティング施工してしまう」事と変わらない状況となります。
粘土状の柔らかい物体が断片的に燃料タンク内面に張り付いているだけですのでその部分から
経年変化と共にコーティング皮膜がいずれは剥離してしまう可能性が高くなります。
「攪拌作業が完璧にできていない」=「コーティング失敗」と言っても良いでしょう。
それだけ重要な作業だ!という認識を持ってください。

 

燃料タンクの容量が大きくなると1回あたり4~5本も攪拌しなければならず
場合によってはこの単調な作業だけで30分ほど必要になります。
ほとほと面倒な作業なので毎回億劫なのですが…諦めて時間をかけてしっかりとやってます。
皆様も手を抜かずしっかりと焦らず攪拌作業、してくださいね!

 

 

その3に続きます。