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【燃料タンクコーティング】「タンクライナー」解説 その3
■「タンクライナー」燃料タンク内面塗料について その3

引き続き「タンクライナー」の性状について解説していきます。
残念ながら公式ではあまり多くの情報が開示されておらず不明な点が多いケミカルですが
弊社では長年使い続けているうちに知り得た情報もあったりします。
担当者が知る限りの内容にはなりますが詳らかにしていきましょう。
▼「タンクライナー」塗料としての性能を考える
「タンクライナー」には主な性能としては以下の特性があります。
①2液性で完全硬化が可能
➁完全硬化までの時間が早い
③完全硬化後も体積が変わらない(膨張・伸縮が無い)
④耐薬品性能が高い(ガソリン・軽油への耐性が高い)
⑤金属への付着性が良好
⑥樹脂・ゴムには付着しない(付着しても簡単に剥がれる)
⑦完全硬化後も柔軟性がある(限度あり)
⑧完全硬化後は熱可塑性がある
注:①➁についてはすでに解説済みですので「その1」「その2」参照ください。
>③完全硬化後も体積が変わらない
「タンクライナー」は塗料の部類に入りますが
「内面塗装」を目的としたちょっと特殊なモノになります。
自動車やモーターサイクルに使われるような塗料のうち
巷で入手可能である一般的な塗料の多くは
「外面塗装」(=対象物の外側に塗装する)を目的とした塗料なので
乾燥すると塗料自身の体積がある程度の比率で縮む(収縮する)ことで
対象物にガッチリと食い付くことで剝がれづらくなる、というような特性を持っています。
一般的に入手しやすいモノの中では
ラッカー系・アクリル系・ウレタン系と呼ばれる塗料がこちらに該当します。
では「内面塗装」(=対象物の内側に塗装する)にこの性質の塗料を使ってしまうと…どうなるか?
乾燥すると塗料自体が縮んでしまう特性が災いしてしまい
塗装した部分から自らの性質で勝手に剥離してしまう、ということになります。
「内面塗料」には「完全乾燥しても体積が一切変わらない」という特性が重要になってきます。
で、この「タンクライナー」ですが
説明書には「2液性変性エポキシ塗料」という名称で記載されております。
※建物や構造物の建設現場であったり防錆や防水工事をやっている方には馴染み深い塗料の1種かもしれませんね。
当然ですが
「乾燥しても縮むことが無い」=「勝手に縮んで剥がれるようなことが無い」性能を有しており
内面側の塗料として問題なく使用することが可能です。
完全乾燥後も冷間時・温間時ともに体積の変化はほとんどありません。(弊社調べ)
本当かな?
ということでサンプルを作ってみました。
ほぼ同じ時期に硬化剤を入れて数か月間屋内に放置して完全硬化させた塗料2種です。
この塗料は同じ形状のペイントポット(画像奥側)に入れておきました。
手前左側・灰色の物体が「タンクライナー」になります。
手前右側・黒色の小さいモノが関西ペイント製2液性ウレタン塗料「PG80」です。


底面のデザインが全て同じなので完全乾燥まで同じ容器に入っていたことを示しています。
「タンクライナー」と比べてウレタン塗料の方が明らかに縮んでいることがわかりますね。
「タンクライナー」の大きさを100%とするとウレタン塗料はおよそ60%ぐらいになっています。
ウレタン塗料の方は自身が縮む力で容器から勝手に剝がれていました。
タンクライナーの方は体積が変わっていないので今でも容器に戻すとピッタリと元通り入ります。
>④耐薬品性能が高い(ガソリン・軽油への耐性が高い)
また耐薬品性能が高いのもこの塗料の特徴です。
ガソリン・軽油が相手であれば完全硬化後に長期間触れていても溶解することはありません。
弊社ではかなり意地の悪いテストを実施しておりますが
現在市販されている乗用車向けの燃料では変質・溶解などは一切起きていません。
流石に溶解力の強いラッカーシンナーやベンジンなどの強力な有機溶剤ですとか
市販の剥離剤に長期間触れていると表面が少しだけ柔らかくなります。
塗膜が極端に薄い場所があると溶解した部分から浸透してしまい
部分的に剥離してしまうような現象が起きます。
ただ、そういった性質の薬品に漬け込んでいたとしても短時間では溶解したりはしません。
手軽に剥離ができるようなヤワな性状では無い、と言えるかと思います。
ちなみに高温にも強くハイカロリーバーナーで炙ったぐらいでは
表面が黒くなるだけで即時に剝がれ落ちることはありません。
完全に剥がすには今のところは物理的に削り落とすような方法しか有効な手立てがないです。
上手く施工が出来ていれば「非常に頼もしい塗料」ではありますが
コーティング施工が失敗してしまった場合には「かなり厄介な存在」となってしまうでしょう。
>⑤金属への付着性が良好
金属への付着性が良く、特に鉄(Fe)に対しては抜群に良い相性となっています。
特に経年でダメージを受けた燃料タンク内面の鉄板が酸化反応の末に凹凸が出来ていて
ザラザラになっている場合にはツルっとした平滑な鉄板と比べ
期せずして「足付け効果」が得られますのでさらに塗料の食い付きが良い条件になります。
非鉄系の金属(真鍮・銅・アルミ)については
脱脂や汚れの除去が完璧にできている状況であれば完全に塗料を弾くようなことはありませんが
若干付着が弱い(塗膜が薄い)ように感じることがあります。
(もしかしたら塗料が透過して下地が見えているのでそう感じるのかも?ですが)
そういった部分については幾度か完全乾燥後に塗り直しをすることで塗膜を厚くして対処が可能です。
>⑥樹脂・ゴムには付着しない(付着しても簡単に剥がれる)
樹脂やゴムなどの金属よりも柔らかい性質のモノには「タンクライナー」は塗れません。
具体的には「タンクライナー」と比較して
『柔軟性が高く』
『温度変化に伴い伸縮しやすい』
といった性質の素材には塗料が食い付きません。
仮に塗料が乗ったとしても短時間で簡単に剥離してしまいます。
塗料が硬化する前の液体状の時には一見すると樹脂部品やゴム部品にも
上手く付着をしているように見えるのですが
塗料自体が完全硬化した状態で樹脂部品側を少し変形させてみると…
「パリッ」と軽い力で塗膜がキレイに剥がれます。
※下記⑦のテストピース製作する際にこの性状を利用しています。
こういった事情から
燃料タンク内部に樹脂部品やゴム部品を残したままでは
「タンクライナー」でコーティングをすることができません。
と言いますか
『絶対にコーティング施工してはいけません!』
どうしてもコーティングをしたい!という場合には
確実にすべての樹脂・ゴム部品を取り除く必要があります。
形状や目的よってはこれらの部品自体を削除してしまうことも検討しなければなりませんが
外してしまうと燃料タンクとして重要な機能が働かなくなる場合も多々あります。
そういった場合には金属製の部品を新たに製作して内部構造を作り替える
といった加工をしなければいけません。
もしくはコーティングを施工して完全硬化した後に
事前に外しておいた樹脂・ゴム部品を戻す、といった方法もあるのですが
燃料タンクの形状によっては作業自体が不可能なケースがほとんどです。
施工例としてFK10フィガロの燃料タンク内部を作り替えたコチラの記事をご参照ください。
>⑦完全硬化後も柔軟性がある(限度あり)
タンクライナーは完全硬化後も限度はありますが多少の柔軟性を持っています。
燃料タンク自体が強烈な内圧の変化(収縮・膨張の両方)や
事故などの原因で直接大きなダメージを受けない限り
多少の変形をしたとしてもすぐに剥離することはありません。
過去に開発部の方からお聞きした情報ではおよそ20mmの変形までは耐えられる、とのことです。
本当かな?
ということでサンプルを作ってみました。(第2弾)
ペイントポット(ポリエチレン樹脂の製品)に余ったタンクライナーを塗布して硬化させます。
樹脂には張り付かない特性なので簡単に剥がれます。

テストピースの塗膜厚はおよそ0.2mmです。
変形が見やすいように目盛の凹凸がある部分を切り取って曲げてみましょう。

屋内にて室温約20℃の環境で完全に弧を描くほど曲げても問題ありませんでした。
小さくて薄いピースだとかなりの変形にも耐えられるのがわかりますね。

さらに折り曲げていくと…流石にあるところで「バリッ!」とへし折れます。
塗膜を厚くする・もっと大きいピースを曲げるなどなど、条件を変えてしまえば
ココまでは大きく曲がらないかもしれませんが塗料自体に柔軟性があるコトはわかるかと思います。
次項で説明しますが「熱可塑性樹脂」なので気温が高い条件になるとさらに柔軟性が増します。
例えば「金属素材の温度変化による伸縮」「走行時に起きる程度のモノコックボディのよじれ」
つまり通常考えられるクルマの使用領域での燃料タンクの変形により
コーティング皮膜が剥がれてしまうようなことはまずありませんので
それほど気にしなくても良いでしょう。
問題になるのは事故等の原因で燃料タンク本体が直接ダメージを受けた場合です。
特に燃料タンクがラゲッジスペース内や
リアトランク下に露出する場所にレイアウトされている車両ですと
後軸(リアホイールを中心とした軸)より後ろ側にタンクが搭載されているため
車両後方を損傷した場合にシャシーと一緒に燃料タンクもダメージを受けやすい構造と言えます。
燃料タンクが明らかに変形してしまった場合には内部を目視で確認して剥離の有無を確認するまでは
剥離した塗料がエンジンにダメージを与える可能性があるので走行をしないようにしてください。
ただ燃料タンクが「20mmを超える変形」を受けている、ということは
車両自体も只事では済まないほどかなりの大ダメージを受けていることが考えられますので
燃料タンクだけ…の心配をしている場合ではないかもしれませんね。
>⑧完全硬化後は熱可塑性がある
「タンクライナー」は説明書の記載では『2液性変性エポキシ塗料』となっています。
完全硬化後は常温でもある程度の柔軟性を持つことは⑦で前述した通りですが
さらに高い温度にすることで柔軟性が増す特性を持っています。
30℃ぐらいからフニャフニャと固さが無くなってきまして
50℃ほどに加熱すると驚くような柔らかさになりますが冷却すると元通りの固さへと戻ります。
コーティング施工の作業には一切関係が無いハナシにはなるのですが
そういう特性を持っている塗料だ、ということはあまり知られていないですよね。
余談になりますが過去にこんな実験をしたことがあります。
とある車両のエンブレム製作に使用した樹脂型があったので
タンクライナーを流し込んでこのエンブレムの複製を作ってみたことがあります。
出来上がった完成品は離型も完璧!形も良くできてる!
「コレはもしかしてイケてるかも?」と期待したのですが…
エンブレムの形状が厚さ4mmほどの薄くて横長いタイプのモノだった影響もありまして
冷えているときはそこそこ固くて良い感じだったのですが
ある程度高温になるとフニャフニャ~と柔らかくなりすぎてしっかりとした強度が出ませんでした。
とてもじゃないが夏季には高温になるクルマの外装には付けられないなぁ…
ということで使用を断念した、というコトがあったのを思い出しました。
余剰塗料はいつも硬化させて廃棄してしまっているので
毎回そのまま捨ててしまうのはもったいないな~とか思ったりしています。
何が良い活用方法があったら良いのですが。
